ギュッと五臓六腑

友人カップルが結婚するのでキーカバー作った

友人カップルが結婚するとのことでめでたい。彼らが一緒に住む部屋では猫が飼われており、ごはんを食べられる猫カフェとしてよくお世話になっていて、お礼もこめてお祝いのしるしにキーカバーを作って渡した。

キーカバー、私と旦那も、私のつくったものをおそろいで持っていて、無意識に毎日使えるという点でよい。おそろいだからといってこれ見よがしに他人に見せつけることもない。キーカバーはあってもなくても構わないもの……アドオンなものだから、生活を劇的に変えるわけでもなくて導入に易しい。実家でレザークラフト始めるにあたってハンマーの音で家族に迷惑をかけることがわかりきっていたので、まずは家長、私の場合は父親にキーカバーをプレゼントして媚を売っておくというライフハックを実行した過去もある。工程も短いし初心者でも作れて、かつ、周囲に媚も売れる作品No.1、それがキーカバー。

猫好きカップルなので猫モチーフにしようと思いつき、猫のあのずんぐりむっくり愛らしい感じを鍵の上部にどう置こうか頭を絞る。彼らの今飼ってる猫たちを模するか〜と考えたけど、レザーで表現するには細かい模様だったことを思い出して早々に諦める。

「キーカバー レザー 猫」とかでぐぐって流し見、パクれそうなデザインを吸収するけど、レザークラフトに限らずあらゆる手仕事は設計図が共有されてもそれを表現する技術で追いつけないので、プログラミング業界のOSSに慣れてると、なんていうか圧倒的な実力差ってあるんだなぁ……とちょいちょい病む。

部屋の鍵が二つあるらしいとの情報を得ていたので、暗くなってから帰宅する時に二つの鍵の判別をわかりやすくしたい。シルエットで分けよう〜と考えたけど、同一のドアに使う鍵ならペア感を出したいし、わずかな形状の差異は逆に混乱させそう。レザーの感触で違いをつけることにする。

使ったレザー、赤くてざらざらしてるこれと、

茶色でつるつるしてるこれ。

ドローイングアプリで革と糸の色との相性を試す。やってみなきゃわかんないことが大半だけど積極的に失敗しに行くほど元気ではないので。若さゆえの過ちなど少ない方がよろしいのですよ。盗んだバイクで走り出さずに、校舎の窓ガラスも壊して回らずに大人になる方がよろしいのですよ。

型紙に起こす。

生首。

習作としてまずは適当な革で作ってみる。穴を開けるところにキリで目印をつけると三つ目の妖怪みたいになって怖かった。夢に出てきそう。

サイズ小さかった。無理矢理鍵を押し込んだので釣り目の猫になった。

一回り大きく型紙から作り直して本チャンやぞ!

作業に飽きたタイミングで写真撮ってる。

ちょうど白い糸を使い終わって飽きたんでしょうね。

できた。徹夜してめちゃくちゃ眠かった。先方と同型の鍵を入れてOKなのでオールOK。今回は同型の鍵が手元にあったからいいけど、一般流通させるキーカバーを作りたい時には最大公約数を取って設計するの超大変そうだな〜と取らぬ狸の皮算用。革だけに。ふふ。

みんな大好きラッピングタイム。

ギャー全然納まる気配がない。

分離させたい。

台風かよ。

納めて乗せてはみたものの「運搬中にもじゃもじゃ上を平行移動しそう」という危機感にさいなまれる。

そこらへんにあった厚紙とテープで雑に固定。

スリーブからはみだそうとするもじゃもじゃが憎かった。

で、箱を包んでイェイ完成。余ったもじゃもじゃはどうしたらいいんだ。焚き火でもするか。

✳︎ ✳︎ ✳︎

友人カップルが婚姻届を出すにあたって、私と旦那に白羽の矢が立ち、証人欄を二人で埋めさせてもらった。婚姻届は出したことあるけどこの欄を書くのは初めて〜とはしゃいだ。

婚姻届の証人の欄(と『応人の乱』で韻が踏める)というのは、お互いの両親の片方ずつだとか、カップルが成立するにあたって尽力した仲人だとかに書いてもらう場合が多いけれど、実は成人済みの人間であればカップルとどんな関係の誰であれOKらしくて、極論を言えば市役所で赤の他人を二人捕まえて書いてもらえば届出には何の問題もないらしい。市役所に来てるような人間なんて大抵は印鑑を持ち歩いているだろうし難しいことではない。

それにしても証人という名称ではあるものの、例えば離婚したって責任を取らされるわけでもなく、あの欄の存在意義ってなんなのだろう?少なくとも友達が二人はいないと今後の結婚生活はやっていけないよ、という忠告なのだろうか。余計なお世話すぎる。

✳︎ ✳︎ ✳︎

誰かのために何かを作る時の、目に見える世界のすべてからヒントを得ようとするあの感じも含めて物の値段は決められるべきだよなぁと思う。映画の予告でよく聞く『構想○年』という表現は過言ではなくて、四六時中、それをどうしたらもっと良きものに昇華させられるだろう、と探し求める時間を、プライスレスとは言い難い。確かに神経がすり減る感覚がある。庵野秀明とか、この種の苦労が人よりずっとやばそう。特に根拠はないけど。