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最近観た映画『ブルース・ブラザーズ』『この世界の片隅に』

ブルース・ブラザーズ

俊敏なデブと無口なノッポの兄弟がバンド結成してわちゃわちゃする映画。R&Bの名曲達のmixをミュージカル風のMVで観てた気分。立川シネマシティの爆音上映で観て良かった……!

ジェームス・ブラウンに似とるやつおるなと思ったら本当にジェームス・ブラウンだった。あいつ、あんなチャーミングな演技ができるのか!人格ぶっ壊れてるし映画に出てたことに驚き。

その他、映画に浅薄な私でもスタッフロールで見たことのある名前を見つけられてわいわい。レイ・チャールズとかツィギーとか。そしてこの映画は莫大なお金かかったんだろうなとぞわぞわ。

曲が毎回楽しい。特にショッピングモールでカーチェイスしてる時の『I Can't Turn You Loose』と、レストランでの『Think』。

どっちも知ってる曲だったのかなーフルで聴いたの初めてな気がする。もしやオリジナルがこの映画なの?"I Can't Turn You Loose" is a song written and first recorded by American soul singer Otis Redding.とのことなので違うな。Thinkも違うな。『I Can't Turn You Loose』、ラジオのジングルかなにかで使われてた気がするんだけどなんだっけ。

この時代のR&Bバンドの曲もっと知れたら幸せになれる予感がある、『Can't Take My Eyes Off You』もそうだし、掘るべきは60年代のビッグバンドとかロックかなぁ。

終盤のエレベーターのシーン、静と動の対比ギャグでまた『ナイト・ミュージアム』を思い出す。いやー『ナイト・ミュージアム』も『ブルース・ブラザーズ』もエンターテイメントの傑作よねぇ……。

カーチェイスシーンのたびにヒーッ怖!はよ終われ!てなってしまうのは私が自動車免許を持ってないうえに結構な頻度で車を運転する悪夢を見てしまうからだということに思い至ってげんなり。自分がどんな悪夢を見るかなんてこと数えたくなかった。

この世界の片隅に

説明的ではない創作物って貴重で、特に戦争映画は押しつけがましいくらいに平和だなんだを唱えてくるから苦手なんだけどこれは戦争がテーマなだけの紛れもないエンターテイメント。

映画の中で「その映画を通して伝えたいこと」を直截的に語るのはあまりにも馬鹿げているなと常々思っている。

極論を言えば、例えば「戦争は良くないです」を主張したいならプラカードに同じ文言書いて道を練り歩いたらいい。でもそうしたくないから映画という手段を選んだんじゃないの?映画という手段をわざわざ選んでおいて、キャラクタに「戦争はよくないです」って喋らせるのは本末転倒じゃない?「戦争はよくないです」っていう一言では到底伝えきれない事情/雰囲気を長い長い物語をつくることで表現したかったんじゃないの?

なにかを語る時それを的確に伝えるために物語が必要になる、というのは私の大好きな小説家である舞城王太郎がたびたび作中で言っていて、というかたぶん彼が一生向き合い続ける大きなテーマのひとつ。『この世界の片隅に』に対して私はうんうん舞城の言っていた物語ってやつがまたこの世に生まれたねと感激する。

ムチャクチャ本当のこと、大事なこと、深い真相めいたことに限って、そのままを言葉にしてもどうしてもその通りに聞こえないのだ。そこでは嘘をつかないと、本当らしさが生まれてこないのだ。涙を流してうめいて喚いて鼻水まで垂らしても悲しみ足りない深い悲しみ。素っ裸になって飛び上がって「やっほー」なんて喜色満面叫んでみても喜び足りない大きな喜び。そういうことが現実世界に多すぎると感じないだろうか?
―『暗闇の中で子供』舞城王太郎

言いたい真実を嘘の言葉で語り、そんな作り物をもってして涙以上に泣き/笑い以上に楽しみ/痛み以上に苦しむことのできるもの、それが物語だ。
―『暗闇の中で子供』舞城王太郎

例えば柿緒が逝ってから僕が発表した短編『光』なんかは日常の延長としてくだらないことが起こったりつまらないギャグが挟まれたりバカバカしい間違いをいろいろやっちゃったりしているはてにも不意に死は訪れたりする、ってことや、あるいは逆に死が待ち構えている時間の流れの中でも人はやはり日常の延長としてくだらないこと、つまんないギャグ、バカバカしい間違いをしてゲラゲラへらへら笑ってたりするのだ、ということを書いていて
―『好き好き大好き超愛してる。舞城王太郎

「戦争はよくないです」を語るために『この世界の片隅に』は戦争の最中を暮らす人々を描く。キャラクタが戦争の是非を語る場面なんか一切ない。そんなことを口に出せばすぐに非国民となじられる時代だったらしいから、実際もそうだったのだろうと思う。「誰の口からも聞かれなかった」という事実が、今の時代の私になによりも雄弁に語る。人々を脅し震えさせ怖がらせるんだから戦争なんて良くないぞ、と。

すずが泣きながら言うあのセリフ(ネタバレしたくないので書かないぞ)は、戦争を続けていたかったのに、という好戦的な意味で言ったのではなくて、大事なものを失ってでも耐えてきた私の覚悟は一体どうしたらいいのか、という憤懣だった。義母も義姉もあっさりと敗戦を受け入れたように振る舞っていたけどもちろんそんなことはなくて、みんな心のうちはすずと一緒だった。国にとっては「負けましたハイ終わり」だけど、人々が失くしてしまった大切だったなにかは二度と帰ってこないのだ。

ところでこの映画のラジオCMのすずのセリフ喋ってるの、綾瀬はるかに聞こえませんか。綾瀬はるかまた朝ドラでも出るのかなと思ってた。

あとラジオで町山智浩さんが喋ってたやつとても良かったのでぜひ。

町山智浩 『この世界の片隅に』徹底解説 http://miyearnzzlabo.com/archives/40487

ネタバレあるので観た後に読むのがおすすめだけど私は観る前に読んで観た後にも読んでハッピーだった。